表面筋電図(Electromyography、EMG)は、皮膚表面に電極を装着して筋肉の活動電位を記録したものです。
筋肉が収縮する際に発生する電気信号を捉え、それを分析することで筋肉の機能や状態を評価します。
以下に表面筋電図について詳しく説明します。
基本原理
- 筋肉の電気活動: 筋肉が収縮する際に神経から筋繊維に伝わる電気信号を検出します。この電気信号は筋繊維の活動電位として現れます。
- 電極の設置: 皮膚の表面に電極を貼り付け、筋肉の電気信号を検出します。電極には湿式タイプ(使い捨ての粘着性のあるパッチ)や、乾式タイプ(再利用可能な銀製の電極)があります。
- 信号の増幅と処理: 検出された微弱な電気信号を増幅しノイズを除去して解析可能な形に整えます。
測定方法
- 準備: アルコールで測定する筋肉部位の汚れや角質を落とします。
- 電極の装着: 測定する筋肉の上に電極を貼り付けます。参照電極は別の場所に装着します。
- データ収集: 筋肉を収縮させながら、電極を通じて電気信号を収集します。この信号はリアルタイムでモニタリングされ、コンピュータに記録されます。
利用例
- 医療: 神経筋疾患の診断や治療効果の評価に使用されます。例えば、筋ジストロフィーやALS(筋萎縮性側索硬化症)などの疾患の診断に役立ちます。
- リハビリテーション: 患者の筋肉の回復状況をモニタリングし、リハビリプログラムの効果を評価します。
- スポーツ科学: アスリートの筋肉の動きを分析し、トレーニングプログラムの最適化やパフォーマンス向上に役立てます。
- 人間工学: 作業者の筋肉の負荷を評価し、作業環境の改善に役立てます。
メリット
- 非侵襲的: 皮膚の表面に電極を装着するだけで済むため、痛みや不快感が少ないです。
- 簡便さ: 測定の準備や手順が比較的簡単で、特別な訓練を受けていない人でも取り扱いやすいです。
- リアルタイムデータ: 筋肉の電気活動をリアルタイムでモニタリングできるため、即座にフィードバックを得ることができます。
デメリット
- ノイズの影響: 皮膚の表面に装着するため、皮膚の動きや外部の電磁干渉によるノイズが混入しやすいです。
- 浅部筋の測定: 深部の筋肉の電気活動は測定が難しく、主に浅部の筋肉に限られます。
- 個体差: 皮膚の状態や脂肪層の厚さなど、個人の体質によってデータにばらつきが生じることがあります。
表面筋電図は、その非侵襲的な特性と簡便さから、広く医療、スポーツ、リハビリテーション、人間工学の分野で利用されています。